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吉本芸人コラム
ラフレクラン 西村真二
ラフレクラン 西村真二
西村 真二(にしむら しんじ、1984年6月30日 - )は、日本のお笑い芸人。お笑いコンビ「ラフレクラン」のツッコミ担当。元広島ホームテレビ所属の男性アナウンサー。
ラフレクラン 西村真二

あぶく銭

公開日 2014/03/26
先日仕事の空き時間がかなりあったので、新宿のホールにふらっと立ち寄ってスロットを打ち始めた。僕が座ったのは『アナザーゴッドハーデス』という新台だった。個人的に『ミリオンゴッド』との相性も良く、そして1台だけ空いていたので何気なしに座ってみた。

打ち始めて投資が福沢諭吉1人分になろうとしていたとき、そろそろ止めようかなと思っていたら、なんと「プレミアムオブハーデス」を引いた。3つある上乗せ特化ゾーンのうち一番平均上乗せ数が高いゾーンを引いた。
芸人にとって空き時間で稼ぐ金ほど得をした気分になることはない。そしてこの時点でトントンかプラス収支になる兆しが見えてきた。

表示されたATのゲーム数は300。次のライブのネタは何にしようかなと考えながら消化していき手元のメダルは約700枚。AT終了後の高確率ゾーンだけを消化して、晩ご飯代ぐらいのプラスで帰ろうと思っていたときそのとき。

な、な、なんとまたプレミアムオブハーデスを引いた。

なんだろうこの気持ちは。この高揚感は。漫才をしていて爆笑が起きたときのそれと似ている。多分……。

そして表示されたゲーム数は200。今日の晩ご飯は豪勢にしようとニヤニヤしながら打っていると残り40ゲームぐらい。突然それは起きた。

ドーンと目の前にハーデスが現れ、リールが奇怪な動きをしだした。

そのまさかだった。
僕は引いたのだ。
GODを。
神様を。

なんだろうこの気持ちは。この高揚感は。
例えるなら……いやもう例えられない。それから約4時間。夢のような時間が続き、終わってみると財布の中に福沢諭吉が10人。こちらを見て微笑んでいた。

次のライブも気持ちよく臨め、役割をしっかり果たして帰ろうとしていたとき、相方が僕に
「にーしーむーらーさーん! 僕に何か隠してない!? ははーん、その顔は……勝ったんでしょ!? しかも結構勝ったでしょ!? ということは……ごちそうさまです!!」
と言い出した。

流石は毎日のように顔を合わせている相方。
僕の顔に「今日は勝ちました」と書いてあったみたいだ。

「ご飯だけなら……」と久しぶりに相方とご飯を食べた。すると相方が突然言い出した。

「一杯いっちゃう!?」

この言葉がすべての悪夢の始まりだった。お酒が大好きな僕にとって断る理由が見つからなかった。だがそんなときに一杯で終わらないのが芸人だ。僕自身もお酒が入るにつれて相方と芸人としての将来像を語りながら熱くなっていった。

次の日の仕事も早かったため、僕はあぶく銭でお会計を済ませた。相方も「先輩ごちそうさまです!」など大学生のようなノリでふざけていた。楽しい時間だったし、熱い話もできたし、とても有意義に感じた。

ここまでは良かった。
ここまでは……。

そして帰る前にトイレに行ったとき事件が起きた。

僕が用を足していると、「先輩おつかれさまです!」と誰かがこっちに向かって言ってくる。どうせ相方がまたふざけているのだろうと振り返ると、そこには見覚えのある後輩の姿が……。僕は心の中で、「しまった……。」とつぶやいた。それもそのはず、よしもとには古くからの慣習がある。

それは「後輩のお会計は全部先輩が出す」というもの。

平然を装い後輩の席に恐る恐るいってみると、「おつかれさまでーすっ!!」可愛らしい後輩12人分の挨拶が襲いかかって来た。

そこからの記憶はほとんどない。
なんだろうあの気持ち。
あの絶望感。
例えるなら……いやその気力がない。

神様はきっといる。
僕が稼いだあぶく銭をみんなに分け与えようと。
何ともオーマイゴッドな一日だった。


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